応用雑学科 K-HSU LABO net 共同研究コース

公開:2005/1/1 最終更新:2005/1/1

「つばめ飛ぶ?」の実用検証

 怪鳥化学研究所よりレポート「つばめ飛ぶ?」発表されたました。東島学園大学では、 実際に「つばめ」が飛んだと仮定し、その所要時間と料金について、現行の移動手段 と比較し、検討しました。

・補足
この論文は、怪鳥化学研究所のレポートを元に執筆しています。そのため、 先に怪鳥化学研究所のレポートを閲覧した後で、この論文を閲覧することをお勧めします。
また、この論文のほかにも、勇者研究機関BS研究所にて同じレポートを元としたレポートが 発表されています。そちらのほうも閲覧することをお勧めします。

つばめ、時間比較する

 それでは最初に、現在、鹿児島〜沖縄間を移動する方法を考えて行きましょう。
まず考えられるのが航空路。現在就航しているエアーニッポン(ANA)では、鹿児島空港から 那覇空港まで1時間25分で接続しています。やはり航空機。早いですねぇ。
しかし、福岡空港など特殊な場合を除いて、空港というのは市街地から離れているのが現状なわけで、 今回の検証にも、そのロスタイムを含めることとし、連絡バスのロスタイム60分。そして、搭乗手続き などのロスタイムも考慮して、合計3時間12分となりました。
それでは、船舶路を使用した場合ならどうなるのでしょうか?現在航行している琉球海運の鹿児島〜那覇間の 時間は、およそ20時間。航空路よりも少し…いや、かなり長いです。しかし、空港の場合と違い、市街地から離れていないため、その他の交通機関は無視するとするので、純粋にこの時間のみになります。

それでは、怪鳥化学研究所開発の「つばめ」ではどうなのでしょうか?
怪鳥化学研究所の論文内に
   360km/hで飛行するので、所要時間は
   660÷360×3600で6600秒になります

と、あるので、時分表記に直して、1時間50分となります。つまり、同じ空を飛ぶ飛行機よりも早く那覇までつけてしまうのです。しかも、空港まで連絡バスで移動する必要もなく、鹿児島中央から列車に乗るだけ。この時点で「つばめ」は飛行機よりも利便性のいい乗り物みたいです。実用化に一歩近づけました。

つばめ、料金比較する

では次に、料金について考えて見ましょう。いくら早くても料金が高ければ、誰も乗ってくれませんからね。
まず、航空路の場合、先ほどの時間計算のときにも記述しましたが、航空運賃のほかにも連絡バスを利用しなければ ならないので、その文を考慮します。ということで、航空運賃2万3千円と連絡バスの運賃1万2千の、合計2万4200円 となります。
船舶路の場合。純粋に運賃だけになるので、1万2060円。ということは、船舶の場合、航空路を使用した場合の約半分で 那覇までいけることになります。まぁ、そのために6倍もの時間ロスが発生してしまうのですがね。

じゃあ、「つばめ」の場合はどうなるのでしょうか?
「つばめ」は空を飛ぶことになっていますが、一応新幹線という分類になっているハズです。ということは、 運賃の決定も、当然現在の新幹線運賃の計算方法で計算されなければならないことになります。
新幹線に限らず、日本の鉄道料金は、一部の例外を除き、移動した距離により決定されます。実際の計算では、 出発駅から到着駅までの営業キロ(移動した線路の長さ)により運賃を算出するのですが、新幹線の場合、特急料金 など別の料金が掛かるため、鹿児島〜那覇間の660kmに近い博多〜京都間(661.3km)の料金をそのまま使用します。すると、 鹿児島〜那覇間「つばめ」の運賃は、1万5410円となることになります。
と、いうことは、現在運行している船舶による移動よりもちょっとだけ高い料金を払うだけで、早く快適な 新幹線での移動が可能となるのです。いやはや、これはもう作るしかないでしょう。

つばめ、ちょっと考える

 これまでの研究により、いかに「つばめ」がとてもつもなくすばらしい移動手段であることが証明されました。 しかし、いまさらながら重要なことに気づいてしまいました。それは、この区間の利用者はいるのか?ということです。
確かに沖縄というところは、日本でも有数の観光地です。全国だけでなく世界各地から大勢の観光客が訪れています。 しかし、鹿児島から沖縄への観光客の人数となると、ちょっと考えても少ないのではないかと思うのが普通ではないでしょうか?
実際、今回比較に使用したANAの航空機もB737という機体で席数が133席。これが1日あたり数本運行されているだけです。 しかも、予約サイトで空席を照会しても、土日祝以外の日に満席になるということはごくまれ。 いかにこの区間を移動する人が少ないのかというのがわかるというもんです。
というわけで、実はこの実験には、鹿児島〜那覇間だけでなく、もっと幅広く考えなければならなかったのです。

というわけで、九州新幹線が全線開通したと考えて、福岡〜那覇の区間も考えてみることにしましょう。
現在就航している航空路の場合、福岡空港〜那覇空港までの時間約1時間56分。料金は2万4500円となります。 それに対して「つばめ」の場合、2005年1月現在でまだ九州新幹線が開通していないので、在来線をそのまま 新幹線として考え、営業キロ数を加算て、東海道・山陽新幹線上でほぼ同じ営業キロである博多〜掛川(945.6キロ) の料金を計算してみると……1万9500円になりました。まだ、飛行機を利用したときよりも安くなりましたが、 その区間を新幹線で移動すると、なんと、4時間27分掛かってしまうのです。(※1) 飛行機の場合の倍以上。こうなってしまうと、新幹線よりも飛行機を選んでしまう人が増えてしまいます。 一応念のために、広島〜那覇間も検証してみると、航空路の場合2万9800円2時間33分。これが新幹線だと 同じ距離の博多〜熊谷(1239.6キロ)と同じだと考えて2万5850円6時間7分。(※1)ここまでくると、 安いから新幹線で行こうかな?と、単純に考えることはできなくなってしまいます。

結論

実際に検証してみると、はじめに考えていたほど「つばめ」は画期的な移動手段とはなりませんでした。 しかし、飛行機と比べて新幹線のほうが勝っているものがあります。それは、乗り換えの回数や乗車(搭乗) の手間です。論文中にも記述しましたが、航空機に乗るには郊外にある空港まで行かなければならず、 その移動には時間が掛かりますし、何より疲れます。また、搭乗するにも荷物を預けたり金属探知機 で検査を受けたりしなければなりません。航空機の場合、移動時間よりもこういった空港内での 時間のほうが多くなってしまうこともあります。その反面、新幹線なら、切符を見せてホームで 待っている列車に乗るだけでよいのです。また、新幹線に乗る駅も、町の中心にあります。 移動するためにバスやモノレールなどを乗り継ぐ必要もないのです。
今回の研究対象である「つばめ」は、新幹線でありながら空を飛ぶため、このような鉄道の利点は ある程度なくなってしまうかもしれません。しかし、その手間を少しでも軽減させることができれば、 運行は可能ではないでしょうか?だれだって、あちこち移動するよりも、ひとつの座席にゆったりと 座っているだけで、目的地につけるほうが便利ですもんね。

(※1)
福岡〜那覇間の場合には空港までの移動手段である地下鉄の料金と時間はあまりかからないと判断したので考慮していません。
広島〜那覇間の場合には空港までの距離が離れているため、連絡バス分の料金と時間を加算しました。
また、どちらの場合も乗り継ぎのために要する時間は加算していません。

参考文献
・[PCソフト]駅すぱあと